つづき その2
<大垣~天橋立>
そもそも岐阜は広大な面積に対して、道の選択肢が恐ろしく少ない。少ないうえ遠回りをしているかのように逸れていたり、不自然な波を打っていたりする。地形の険しさを物語っていますね。
岐阜市街からは灼熱の世界。関東の暑さとは異なるもっと凶暴な暑さ。紫外線も強い。
しかしもはやここまで来ると暑さとか登ったり下ったりとかいうのはどうでも良くなってくる。無我の境地で脚に課されている回転運動を維持する。
関ヶ原から長浜まではゆるやかに登る。記憶の限りではこの区間が一番暑く、一番体が渇いていた。
琵琶湖エリアに入ってスーパーが見えたので迷わず入る。日没までに着けるかが最大の懸念事項でしたが、それに対してどうにかする気力がもはや無い。気にせず30分のロング休憩をとった。
琵琶湖エリアにいるが琵琶湖はどうでも良かった。走りながら一瞥してそれで満足だ。景色を喜ぶ感受性に割くエネルギーが捻出できなかった。
体は疲弊を極めており、無駄に力んだりすることが無いので却ってリラックスしたロスの少ないフォームがとれている気がする。
もう自転車を漕ぐというよりは反射的な運動になっている。延々と続く無機的な神経伝達。無意識を意識できそうになる。もはや悟りの境地。恍惚の域。陶酔の極み。
福井県境。
残り100kmくらいだろうか。時間にして4時間弱だろうか。
日没までに着けるだろうか。携帯のバッテリーが切れた。ライトのバッテリーもない。
どうでもいいか。
残り100kmとなってもう間もなく着くような気がしていたが、長かった。いや永かった・・・
日本海が見えても何の感動もない。自分でも驚くほど感動が無かった。
自転車に乗っているときは意識があっちだ。
コンビニに入って店員さんが方言を炸裂させているときは感動した。
休憩しているときは意識がこっちだ。
何だかもの凄いところに来てしまっている気がする。
薄暮の舞鶴市街。540km。
さあ、いよいよゴールスプリントだ!
最後の峠であろう峠の名前が「念仏峠」という名前で冗談キツかった。
宮津市に入って日がいよいよ沈もうとしていたが、このときの日本海は美しかった。
この景色には確かに価値があった。やはり自転車を完全なものとするためには美しい景色と、壮絶な疲労と、充溢する脳内麻薬が必要だ。
19時半頃ついにホテルに着いた。
誰もいなかったので最後は両手を高く挙げてゴールした。
ホテルは素泊まりなので、夕食はない。近くにコンビニなどもない。バックポケットに残されていたロールパンと岐阜で落車の手当をして下さったお婆さんにもらったキャンディーを食べた。
風呂がないホテルだったのでシャワー浴びて、浴衣を羽織って床に蹲った。
かれこれ30時間以上起きているが不思議なことに眠りたい気分にはならなかった。
ただただここまでの焼けそうな24時間を反芻することで満たされた。
距離・・・576km
獲得標高・・・5130m
走行時間・・・20.8時間
平均速度・・・27.8km/h
最高速度・・・72.8km/h
機材
ギア52×36 11-25
タイヤ前 マキシス コロンビエール 23C 8.2気圧
後 パナレーサー タイプA 25C 8.5気圧
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翌日は早朝に少しだけサイクリング。
誰もいない・・・・・
歴史を感じさせる風景は和みますね。
ロングは私の自転車スタイルの原点です。